第ニ話|考える習慣を身に付けろ

 

「どや?調子は」

突然、何の前触れもなく私の前にいか様が現れた。

「い、いやあ。あれから何の連絡もないし、何も変わらない状況です」

いか様は首を2度ほど横に振り、あきれた表情でこう話す。

「お前な、変わらない状況ですじゃないねん。お前が変えようとしてへんだけやろ。そうやって相手からの連絡を一生待ち続けるつもりかいな」

「でも、こっちから会いに行ったりするとストーカーみたいになるし・・・」

「当たり前や。会いに行く以外に何かすることないんか」

「でも、相手の別れた理由が分からへんと、何したらええか考えられんし」

「相手がどうこうじゃなくて、お前自信で何かやろうとは考えれんのか」

「でも、自分なりには・・・」

「あほんだらぁーーー!!でもでもでもでも、うるさいんじゃ!!!」

いか様は体全体を真っ赤にして、私にそう怒鳴りつけた。

「お前な、前の時も思っとったんやけど、人任せにし過ぎや。何でも相手次第で自分で何かしよう、何か変えてみようとは一切思わへん。復縁がどうとか言う前に、人として考え方が間違ってるんや。人として必要なネジが一本どころか何十本も抜けてやがる」

(いかごときに何で説教されなあかんねん)

私の正直な本音だ。仕事でもプライベートでもここまで人格否定されたことは一度もない。なのによりによって人間でもない「いか」みたいな生物になんでここまで言われなきゃいけないんだ。私は怒りを抑えてこう話した。

「じゃあどうすればいいんですか?神様なら、なんでも知ってるんでしょ」

いか様は、またも呆れた表情で深いため息をついてこう話す。

「ええか。お前に必要なのはな、自分で考えようと努力することから始めなあかんわ。わしな、今まで数千人の復縁をサポートしてきたけど、お前みたいに自分で考えようとせず、わしに答えを求めてくる奴がホンマに多いんや。世の中に『復縁屋』とかいう会社も存在するみたいやけど、お金さえ払ったら復縁屋が復縁させてくれると勘違いしとる奴が多いのも事実や。言っとくけど、そんな簡単に復縁なんかできへんからな。何百万注ぎ込んでも、復縁できん奴は復縁できん。例え運よく復縁できた奴も、数ヶ月もすればまた振られるのがオチや」

すると、いか様は自分のまたぐらに手足を突っ込み、何かを取り出した。

「これはな、特注で仕入れたいか様専用課題ボードや。今日からな、お前に課題を一つずつ与えていく。三つも四つも課題与えてもお前には無理やからな。」

「課題ボードですか。要するに、いか様が俺に課題を出して、それをやっていけば復縁に繋がるってことですか?」

「そう言うこっちゃ。わしからの課題を一つずつクリアしていけば、復縁に近付くってわけや」

「なるほど・・・。では早速課題を下さい」

「まあ、慌てんなや。ほんまにお前は欲しがりやな。まず、さっきからワシはお前に何て言うてる?」

「はあ・・・。ええっと・・・人任せにし過ぎ。自分で考えようとしない・・・」

「そやな。とにかくお前は常に他責なんや。自責の気持ちが皆無なんや」

「自責・・・ですか?」

「そうや。全てが自分の責めに帰すると考えることや。ちなみにお前、ジェームス・アレンって人知っとるか?」

「ジェームス・アレン・・・聞いたことないです」

「まあええ。アレンはワシの古くからの友人なんやけどな、簡単に彼を紹介したる。」


James Allen.jpgジェームズ・アレンJames Allen、1864年11月28日 – 1912年)
イギリスの作家である。自己啓発書と詩によって知られる。

ジェームズ・アレンはイングランド中部のレスターに生まれた。生家は小さな事業を営んでいたが破産した。父は事業を再興し家族を呼び寄せる目的でアメリカに渡るが、アレンが15歳の時に強盗に襲われ命を落とす。アレンは父親の死によって退学を余儀なくされ、イギリスの製造工場などで様々な仕事をして家族を支えた。

作家となる前は大企業の秘書として働いていたが、レフ・トルストイの書物に啓発され38歳から著作に専念し、最初の著書From Poverty to Powerを出版後、デヴォンの町イルフラクームの小さなコテージに、妻リリー・L.アレンと娘のノーラと共に会社を辞めて移り住んだ。9年間で19冊の本を書き、同時に雑誌The Light of Reasonを発行した。

2冊目の著書で代表作であるAs a Man Thinketh(邦訳,『「原因」と「結果」の法則』)は自己啓発書の原点であり、デール・カーネギー、アール・ナイチンゲールなどに大きな影響を与えた。同書は約1世紀前の1902年に書かれた書物であるが現在も世界中で売れ続けている。聖書につぐロングセラーの一つと言われており、日本でも50万部を超えるベストセラーである。

同書の推薦の言葉として「何かあって落ち込んだりしたときに読んでごらんなさい。人生なんて、とても単純なものなのよね」がある。

なお彼はより多くの人に読んでもらいたいとの願いからイギリス以外での著作権を放棄している。


「上にも書かれてるけど、アレンの著書に『原因と結果の法則』って言うのがある。ワシも監修に携わった彼の代表的な名著や。簡単に本の内容を言うと、人生に偶然という要素はまったく存在せず、すべて『原因と結果の法則』に従って創られているという真実を学ぶことができるんや。人格や環境、成功といった外側にあらわれる『結果』は、すべて内側にある『原因』によってつくられているというのが『原因と結果の法則』であって、この法則は『つねに絶対であり、ゆらぐことがない』とアレンは説いてる。植物が種から芽生えるように、ワシらの行いも、内側で密かにめぐらされる「思い」という種から芽生えるもの。つまり自分をとりまく環境を変えるためには、内側にある「種(=原因)」を改善しなければあかんのや。具体的に言うと、お前の内面にある『思い』が種となる。にもかかわらず、お前ら多くの人間は『良い結果を望みながらも、その結果と調和しない思いをめぐらすことによって、その達成をみずから妨害しつづける傾向にある』とアレンは言うとるんや。」

(何を言いたいのか全然ピンとこない)

「つまり、どういうことでしょ」

またもいか様は呆れ顔でこう答える。

「ホンマにお前は自分で考えようとせんな。咀嚼って言葉知らんのか。まあ、今日も時間があんまり無いから言うけどな、つまりは全ての結果には原因がある。その原因を理解し、自分の心をしっかりと管理して人格の向上に務めることができれば、それに見合った環境の変化を体験することができるってことや。」

「原因を理解するにはどうしたらいいんですか?」

「とにかく自分で考えるんや。『人間は考える葦である』という言葉もあるやろ。人間という生き物は自然のうちで最も弱い葦の一茎にすぎない。でもな『考える』ことのできる人間の唯一の能力をフルに発揮して考えるんや。つまりお前への課題はこれや」

「考える習慣を身に付けろ、ですか?」

「そうや。とにかくお前は『考えること』を覚えなあかん。これは多くの復縁希望者にも言えることや。馬鹿らしいようにも聞こえるけど、『自分で考える』ことができへん奴がホンマに多い。だからしょうもない復縁屋なんかに依頼して、高額な金額を支払ったにも関わらず、何の成果も得られないまま終わるアホな奴らが増え続けとるんや。とにかく考えるんや。自分のことだけでなく、客観的に俯瞰して考える習慣を身に付けるんや」

「わかりました。『自責で考える』ってことですよね」

ようやくいか様からも笑顔がこぼれた。

「そういうこっちゃ。自分に責任があると思って考えるんや。そうすると今は見当もつかん別れた原因が見えてくる。そこからのスタートや。」

「分かりました。精一杯考えてみます」

「よっしゃ。じゃあ、次に会うときまでしっかりやるんやで。ほなな」

そう言い残し、いか様はいつもの水槽へと戻っていった。
そう言えば私自身、今まで『考える』について考えたことはなかった。自分の感情に任せて怒ったり、悩んだり、苦しんだり・・・そんな繰り返しだったようにも思える。
今日から『考える』を意識して、自責の気持ちで生活していこうと心に決めた。

[つづく]

Please Login to Comment.